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FEATURED ARTIST 山中千尋 特集 |
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ユニバーサルミュージック(Verve)に移籍しての第2弾となる『ラッハ・ドッホ・マール』(とにかく笑っていこう、といった意味)をこの9月にリリースした、美人実力派ジャズ・ピアニスト山中千尋。これまでも、ジャズ好きなら誰もが知っているようなスタンダード曲を、アッと驚くようなアレンジでリスナーに衝撃をあたえ、そして魅了してきた。テクニックはこれまでのキャリアから見ても世界の最高水準であり、その歌心に山中千尋の個性が現われている。キュートで小柄なルックスからは想像できないほどに、一度そのピアノの即興演奏を聴いてしまえば、溢れ出るエネルギーと知性に、特別なオーラが輝いているのが見えるはずだ。その山中さんに、新作や趣味の話を伺うことができた。
◇新作について
新作では前のアルバム『アウトサイド・バイ・ザ・スウィング』とは、メンバーが違って、以前一緒にやっていたブラッド・メルドーのメンバーに戻っていますね?
「戻ったというか、元々ブラッドより先に私がトリオで一緒にやっていたんです。前のアルバムと対比になるようなアルバムを作りたくて、ピアノの演奏をフィーチャーしつつ、エンタテインメント性があるアルバムを作ろうと思ったんです。昔のボビー・ティモンズのアルバムを参考にした部分もあって、一度聴いたら忘れられないような印象に残る曲を集めました。ジェフとラリーと一緒にやるのもこれでアルバム3枚目なので、リラックスして出来たし、私のエネルギッシュなところも前面に出るように曲を選んだし。マニアの方にも、ジャズを聴いたことがない人にも楽しんでもらえるように作ったアルバムです」
これまでのアルバムでも、多くのジャズ・スタンダードをカバーしているが、今回はビル・エバンスでも有名な「ドルフィン」やローランド・カークの「カッコーのセレナーデ」、歌ものとして数多くのカバー曲がある「縁は異なもの(What A Diff'rence A Day Made)」などを取り上げている。一方で、前作のように中島みゆきや日本の民謡(「八木節」)、フレンチ・ポップスも取り上げる独特のセンスを持っている。
カバー曲を取り上げる、何か基準のようなものはあるんですか?
「ローランドは好きで前からよく聴いていて、原曲はフルートという楽器の“息”の破天荒さが凄く出ているんです。骨組みはシンプルでよくあるコード進行なんですけど、ピアノでやっているものがほとんどなくて、私は、ローランドが書いた最初の音楽よりも、もっとメロディアスに内側に入っていく感じでやってみたいと思ったんです。単にピアノで引き倒すというよりも、メロディを紡いでいくような演奏をしたかった。フルートって、息の感じに跳躍があるんですけど、ピアノは息が出ない楽器なので、そこをどういう風にやるか難しかったですね」
「中島みゆきさんの曲って、詞の世界をお好きな方が多いと思うんですけど、私にとっては、メロディが凄く強く感じられて、どんな風に料理してもメロディが崩れない。「まつりばやし」*は、デューク・エリントンの曲とつなげて、ニューオーリンズのセカンドラインというグルーヴでやっているんですけど、私はアレンジでかなり曲をいじってしまうので、どんなに料理してもメロディが一番上に出てくる曲というのを選んでます。フランス・ギャルの曲(「Teared Diary」*)なんかも、ケニー・カークランド風の和音をたくさん入れて、バラードにアレンジしたら面白いんじゃないかと思って。ミカドというグループのカバーで知ったんですが、最初の印象で好きだなと思った曲は、割とアレンジしてみたくなりますね」
*『アウトサイド・バイ・ザ・スウィング』収録
前作でも今作でも、モダン・ジャズとは違ったラグタイムのようなものをやったり、ピアノの他にフェンダー・ローズとかオルガンも使ってますよね?
「今回のものは、スタジオにチューニングがちょっと合っていないピアノがあって、スタジオの余った時間でフリーに弾いていて形になりそうな部分だけ抜粋したものなんです。ラグタイムは好きですよ、ジェームス・P・ジョンソンとか。いつかラグタイムのアルバムを作れたらなと思ってます」
「ピアノってポンッて叩いた後は、音が減衰してしまうんですね。オルガンだと管楽器のように音が延びるし、フェンダー・ローズもディストーションをかけると、音のうねる感じが出ますね。「ワン・ステップ・アップ」は元々管楽器のために書いた曲なんです。「縁は異なもの」はオルガンのトラックもあって、沢山トラックがありすぎて、どう終わっていいかわからなくなってしまって(笑)。アレンジは途中から数学みたいになってしまって、テープを遅回しにして、そこで戻ってきたところが、さっきより半音低い調になっているというのを計算してやったんですけど・・・。ピアノからエレピに移る時とか音質がガラっと変るので、オーボエとフルートの音を一瞬入れて、音のトランジションをスムーズにしているんですよ。私は美術が好きなせいか、いろいろいじってみて、景色が変っていくようなひとつの映像作品みたいな作りになってる。ちょっと予期しなかったアレンジになってしまって大変だったですけど(笑)」
◇ジャズとニューヨーク
桐朋学園の時は、ずっとクラシックをやってらしたわけですが、クラシックからジャズに興味を持つようになったきっかけは?
「ジェリ・アレンの生演奏を見て、カッコいいなと思って。フィジカルっていうか見た目がカッコいいなって。ジャズのCDも聴いてましたが、わからないところも沢山あって、これは何なんだろうと思いながら、ずっと聴き続けてたようなところはありますね。私の中では、クラシックもジャズも分離しているものではないんです。ただ、クラシックってどうしても作曲家という第三者が中に入ってきてしまう。自分とピアノだけしか無いところで表現できるものをやりたいなと・・・、そこでジャズのフォーマットも面白いなと思ってやり始めました。今でもクラシックは練習してますよ」
影響を受けたピアニストは?
「ハービー・ハンコック、バド・パウエル、セロニアス・モンクとか、あとローランド・ハナも好きだし、ビル・エバンス、ボビー・ティモンズ、ソニー・クラークとか、挙げていったらキリがないですけど。今回のアルバムも、特に書いてはいないんですが、一つ一つの曲が、好きなピアニストへのトリビュートになってます。ピアノの色彩がたくさんあるところを表現したかったので」
ニューヨーク在住ですが、アルバムの印象はヨーロッパ風なテイストもあるんですが、 その辺は意識しているんですか?
「ニューヨークでのライブでは、やはりスタンダードが中心になるし・・・。私はライブとアルバムでは全然違うので、アルバムというフォーマットでは何度でも聴いてもらえるような作りにするのがひとつのコンセプトだし、生でやるのとCDの違いを、凄く意識して作ってますね」
ニューヨークでの、ライブがない時の普段の生活ってどんなですか?
「やることはいっぱいありますよ。最近、写経の本を読みましたね・・・。普段は、美術館に行くこととか多いですね。ジェニー・ホルツァーの展覧会を見に行ってきました。あと、語学をやったりとか。時間の空いているときにできるので、今はフランス語をやっています」
◇アート好きな本性
インタビューの前に、山中さんの趣味や好きなものなどの資料のようなものを拝見し、アート系の趣味が多いことがわかった。“ロボット作り”が趣味だという。ちなみに、初めて買ったレコード(CD)は、ハービー・ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』と書いてありました。
ロボット作りが好きって書いてあるんですが、これはどんな・・・?
「ロボットは今でも沢山作ってます(笑)。フィギュアですから、動かないですけど。最近は針穴写真も好きで、自分でカメラ作って、写真撮ってます。ファインダーがないので何が写っているかわからないところが面白くって」
「映画は好きですね。タルコフスキーの「ローラーとバイオリン」は、しばらくの間、ご飯を食べる時にいつもDVDで見てました。私にとってのマスターピースです。他にはロバート・ロドリゲスの『エル・マリアッチ』とか好きですね。前作の『アウトサイド・バイ・ザ・スウィング』のタイトルは、タルコフスキーの『惑星ソラリス』に出てくるセリフから取っているんですよ。『ラッハ・ドッホ・マール』は、ヤノーシュという、ドイツのまるで哲学者みたいな絵本作家がいるんですが、その人の絵からつけたんです」
◇今後の予定は?
今後の方向性というか・・・、歌うことは考えていますか?
「う、うたは・・・(汗)。一度サウンドチェックで歌ったことがあるんですけど、周りからの評判がよくなくて(笑)。歌は好きなんですけど・・・、エリス・レジーナとかとても好きで、歌えたらいいなとは思うんですけど、まだ人様に聴かせられるような歌ではないので・・・、我慢しておきます」
「9月28日に秋葉原の石丸電気でインストア・イベントがあって、その後、12月に日本ツアー、来年の2月にヨーロッパを回ります。その時は、もう次の新しいアルバムのメンバーになっていて、『ラッハ・ドッホ・マール』からの曲もやりますけど、さらにその先を見据えてやっていくという感じです。これまでとは、かなり違う感じになるんじゃないかな」
(取材&Text:遠藤哲夫) |
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ダウンロード価格
アルバム \2,000(税込)
トラック 各\200(税込)

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| *印の曲は、アルバムで購入の場合のみダウンロードできます。 |
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山中 千尋 (やまなか ちひろ)
桐朋学園を卒業後、英国王立音楽院留学、米バークリー音楽院を首席で卒業。
バークリー音楽院在学中よりナンシー・ウィルソン、ジョージ・ベンソンやジョージ・ラッセルらのビッグネームと共演を重ね、IAJEシスターズ・イン・ジャズコンペティション優勝やダウンビート誌アウトスタンディング賞など幾多の賞を受賞。
2001年10月にジャズピアノのレーベル「澤野工房」から『Living Without Friday』を発表、大手CDショップのジャズ・チャートで一躍トップセールスをマークし、新人としては異例のデビューをかざる。
2002年12月にニューヨークの若手トップミュージシャンを従えた第2作『When October Goes』をリリース。ジャズ・チャート初登場第1位となる。日本でのライブ活動も本格化し、2003年初頭に行なった「山中千尋 ニューヨーク・トリオ ツアー2003」の模様を伝えたTVドキュメンタリー「情熱大陸」(MBS系 2003年3月放送)で、その国際的な活動をさらに広く知らしめる。
2003年8月には日本公演を収録したDVD『Leaning Forward』を発表。ポップスを含む全ジャンルのDVDチャートでベストテン内に初登場ランクインした。
2004年1月には米NBCラジオ、カーネギーホールへ出演。5月に第3作目『Madrigal』を発表し、「ツアー2004〜Madrigal」を全国7ヵ所で開催。8月、11月にも再来日、「ニューヨーク・トリオ ツアー2004」として各地で公演を行なった。
2005年1月にユニバーサル クラシックス&ジャズに移籍し、9月に待望の移籍第1作『アウトサイド・バイ・ザ・スウィング』を発表。 |
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| アグレッシヴでストレイト・アヘッドな演奏の中に、本場ニューヨーク・ジャズ最先端のスタイルを見事に反映し、さらに彼女にしか表現できないポップさも加わった、まさに「チヒロ・ミュージック」と呼ぶにふさわしいアルバム。 |
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| 山中千尋が選曲したコンピレーション・アルバム。ユニバーサルミュージックの誇る数多のカタログの中から厳選された、ジャズ&ポップのナンバー+山中千尋の新録トラック2曲を追加収録! |
ニュー・アルバム『ラッハ・ドッホ・マール』発売記念〜インストア・イベント
2006年9月28日(木) ISHIMARU SOFT2 イベントホール
19:00〜
お問い合わせ ISHIMARU SOFT3 03-3257-1300
http://www.ishimaru.co.jp/event/
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音楽は血液の中にすっと入ってきて、生きている上で他の何にも代え難い感覚に集中させてくれます。その感覚を言葉にするのは難しいですが、音楽に言葉は元々必要ありませんので、あとは音楽にまかせます。ここに選んだ曲はそれぞれのアルバムもとても素晴らしいものばかりです。興味をお持ちになったらぜひ、オリジナルも手に取ってみて下さい。(『ユニバーサル・ア・ゴー・ゴー!〜山中千尋セレクト・コンピレーション・アルバム』ライナーノーツより)
M1.Grand Central
当時のマイルス・バンドの“マイルス抜き”で録音されたものです。コルトレーンとキャノンボールの息のあったフレージングとハードにスウィングしながらどこか切ない感じのメロディーが素敵な曲です。
M2.Something's Coming
素晴らしいトリオのアレンジに耳を奪われます。自由自在のブラシ・ワーク、ベースの硬質な線、ピアノの色とりどりな様子は、自由に描かれていく絵画のようです。高級車の後部座席に座っているような、安定したスウィングがいつも心地よいトリオです。
M4.Dingy-Dong Day
メーク・ジョンソンはユニークでチャーミングな音楽性をいつも忘れない音楽家です。彼もガレージ・バンドから出発したのでしょうか?他にパット・メセニー、ビル・フリーゼル、ジョーイ・バロン、豪華なガレージ・バンドです。
M5.I've Found A New Baby
レスター・ヤング、ナット・キング・コール、バディ・リッチのそれぞれの見事なタップ・ダンスが楽しい演奏です。全ての瞬間に口伝えのジャズの歴史がちりばめられています。
M6.Tres Palabras (Three Words)
チャーリー・ヘイデンの選曲にはいつもはっとさせられます。そして彼の寡黙で何にも動じる事のない演奏には、頭が下がります。ここに選んだものも、とてもロマンチックな曲です。ジョー・ロバーノの控えめな演奏も、さらにこの曲の甘さを引き立てています。
(コメント:山中千尋)
*「Serenade To A Cuckoo」は『ラッハ・ドッホ・マール』で、「Cleopatra's Dream」は『アウトサイド・バイ・ザ・スウィング』で、それぞれカバーしています。 |
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