映画と共に話題となった「八月の濡れた砂」や「ダンスはうまく踊れない」「SEXY」 「Moonlight Surfer」などのヒット曲で、日本のシティ・ポップス史に大きな足跡を残した石川セリ。独特のアンニュイなボーカルとセクシーな容姿で多くのファンを魅了してきた。オリジナルの新曲を含むアルバムとしては85年の『楽園』以来となる、『Re:SEXY』を今年の4月にリリース。ビルボードライブでのコンサート・ツアーや、NHK総合テレビ『SONGS』への出演など、華麗なる復活を遂げた石川セリさんにお話を伺うことができた。
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【ライブ・ツアーについて】
◇「ビルボードライブ東京」でのライブはゴージャスでしたね、雰囲気がキャバレーのようで…。
ああいうのってあんまりないのよね。そんなに芝居芝居しない感じで、私たちがオチャメにできるっていう状況があまりないんじゃないかなって思って。そういうことをやりたかったの。
◇あの“かぶりもの”にはビックリしたんですが、衣裳とかも含めコンサート自体のコンセプトはセリさんが考えられたんですか?
そうね、みんな天才な人を集めたから(笑)、人材ですね。そういう人たちと語りあってね。湧き出てくるイマジネーション。コンセプトはムーラン・ルージュ。夢のあるものでないと。お金をいただいて皆さんにエンジョイしてもらうためには、夢のあるほうがいいと思っているから。日常茶飯事的なことを見せられても堅苦しい感じがしちゃうから。特に私が観客サイドだとそうなので。
◇今回のバックミュージシャンもエミ・エレオノーラさんの人脈からですか?
私は彼女とやることによってもの凄い安心して出来たし、さすがだなと思った。あそこまで出来る女の人がね、音楽プロデューサー、アレンジメントから、女のパワーでしっかりしたものを持ってる人がね、いてほしかったし、いたっていうことがわかったし、それをみんなにも知ってほしい。こういう人が日本人にいるっていることをね、みんなも誇りに思いなさい(笑)。
私が着替えている間にエミ・エレオノーラがやるコーナーもあって、私たちがこんな感じで、手作り風に作っていけるんだっていうことをみんなが気付いてくれればね。
◇今回のライブ・ツアーを振り返ってみての感想は?
東京は面倒くさいから本当は好きじゃないのね(笑)。でも、ビルボードのあの場所は気に入ってるから、あそこではやりたかった。やっぱり大阪が好きですね。大阪は反応がとても素直でダイレクトでしょ。福岡もわりとそうなんです。オーディエンスも表現できる人たちなんですね。自分が面白いって思ったときに、「ワッ」って表現できる。じゃないとね、せっかくモノを見せてもらうときに、自分たちも楽しいんだって表現できないと、モノが育っていかないじゃない。お互いが作ってるんだっていうことを体験してほしい。
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【復活作『Re:SEXY』について】
◇『Re:SEXY』を作るきっかけは?新曲を作って発表するのは23年ぶりとなるわけですが…。
私はずっと歌が好き、シンガーなんですね。でも主婦になってから省エネを考えているわけ。なんでこんなにゴミが出るんだとか、モノを大事にしてほしいとか…。どうせこれゴミになるかもしれないから、買うのをやめようとか、そんなマインドになってたんです。でもいつも、デヴィッド・ボウイを聴いたり、プリンスを聴いたり、シャーデーを聴いたり、刺激はたくさん受けて、それが喜びだったから、いつかはやるだろうな思っていたんですけど、わざわざ出すようなものかどうかシビアな面を持ちたかった。そこで、エミ・エレオノーラに出会った。彼女を見て、「あっ、この人とやるのがいいな」と現実的に考えることができた。「いよいよ時期がきたな」、これは絶対にいいと思ったんですね。
◇新曲は3曲あって、「見つめる夜」はセリさん自身の作詞ですが、これはエミさんとのコラボが決まってから書き始めたのですか?
勿論そうよ、畳み込むようにして(笑)。期は熟してきたわけよ。エミエレと話をしてね、「セリさんどんなこと考えてるの」とか。そこから「ひまわり」が出来て、私も詞を書こうかな、自分からの発信、みんなに対するメッセージを書きたかった。オリジナルばっかりでもよかったんですけど、とにかく早く出したかった。それでこういう形にしたんです、ベストも入れてね。
◇これまでのヒット曲のベスト盤でもあるわけですが、選曲はセリさん自身が?
ベスト盤に対していつも思っていたのは、人が勝手に作るのもいいだろうとは思うんですけど、やっぱり自分で選ぶっていうことに意義があるんだろうなって常々考えていたし。本当は、夫にも言ったことがあるんですけど、妻である石川セリが選ぶ井上陽水のベスト盤を作ってみたいって。でも却下ばっかりでね(笑)。だから、自分のは自分で選ぶと。今回は、自分のため、自分が聴きたいものだけ、そういうテンションで選んでて、それにみんなついてくるんだったら、ついてきたらいいと思うよっていう(笑)。
◇セリさんの代表曲である「ダンスはうまく踊れない」をオリジナルに加えて、リミックスで入れているのは理由があるのですか?
現代の息吹きなんですけど、エミ・エレオノーラと随分話しあって、もっといろいろなものを作ってみたかったのね、新しいやり方で。リミックスは、よくエミエレが勇気をもって立ち向かってくれたなって、名曲ですからね。よくやったと思います。完成したのを聴いて感激したのね、大好き、ああいう世界観が。“これから始まる感”がすごくあるんです。
◇「SEXY」はリ・トラックダウンなんですが、ダブル・ボーカル風になってますね?
いいよね〜、あれ(笑)。石川セリが何人もいるみたいで…。あれだけでも買う価値がある?いいこと言うね〜。絶対書いといてね(笑)。
私がね、昔主婦をやってる頃、ストーンズが聴きたくてね、ストーンズが命みたいに好きだから。それで買って台所で聴いたときに、切なかったのね。ストーンズのベスト盤を聴く自分も、こんな風にストーンズと接する自分もね。だけど、最近またストーンズのベスト盤が出て、昔は切なかったけど、今は切なくないのね。それもまた不思議だと思うんだけど、何故かっていうとね、ストーンズは続けてやってるから。だから、古い曲が入り、新曲も入っていると古くないの。動いている。石でもなんでのいいの、彫刻のようにしわが刻まれても“ライク・ア・ローリング・ストーン”。それは、一緒に年を重ね、一緒に生きてるっていうことなの。それは楽しいなって思えるようになったんです。それで、このアルバムもそんな感じになったかしらね、って。
◇『ときどき私は…』や『気まぐれ』時代の曲ばかりでなく、81年に復活されて以降の曲も結構入っていますね?
私の可愛い子供みたいな感覚ですよね。結局、自分の気になっていた曲、自分が聴きたい曲、私が思う、完成度の高い曲を集めてるんです。
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【これまでのキャリアについて】
◇石川セリの名前を最初に印象づけた、「八月の濡れた砂」を歌うきっかけは?
あれは日活がロマン・ポルノに移行する頃の作品で、畳み込むような撮影とか、音楽もないがしろにされている時代でしたから、作品はあったんだけど歌手が見つからない。それをNHKの人からお話をいただいて、ブランド好きの私が「NHKの人が言ってるんだからきっと大丈夫」っていう信頼感で、曲を聴いて歌合せをして、レコーディングが決まったんです。
◇デビュー・アルバム『パセリと野の花』のフォーク/ポップスのタッチと、「八月の濡れた砂」では歌い方が随分違う印象を受けるんですが?
私は何パターンも歌い方をもってるんです。みんなそうなんだろうと思いますけど、私は特にそういうのが好きで、何パターンも演じたいと思っているので。当時私が影響を受けていたのは、ストーンズやビートルズや、ドアーズとかママス&パパスとかジェファーソン・エアプレインとか…、いろんな要素なの、ボサノヴァとかもね。音楽のいいものは全部網羅したいくらいで、それを実験的にやってみたのが樋口康雄と作った『パセリと野の花』なんです。
◇樋口康雄さんとはコーラスグループ「シング・アウト」で一緒だったんですよね?
そう、中村八大ですよ、ブランドですよ。「涙をこえて」の振付けが…(笑)。
◇ネットで面白い写真を見つけたのですが…(シング・アウト「愛のつばさを」のジャケット・コピーを見せる)。
これ貴重品なのよ!これ私よ!ひどい写りね〜、可愛い〜、ダンゴみたい(笑)。これ、樋口康雄よ。色気があってね〜。よくみんなから説教されたのよ、二人で手をつないじゃいけないとか、仕事場でイチャイチャしちゃいけないとか…。これリディアで、これエミね(メンバーを指指す)。
◇NHK総合テレビの『ステージ101』には出てらしたんですか?
やるわけないじゃない。女王様が出るもんじゃない、っていう感じ(笑)。自分は自分で演出するのよ!
『ステージ101』は、週に3回くらい、トレーニング期間があったんです、それが3ヶ月くらい。週に3回も学校みたいに、振付からなにから、私はやりたくないって言って。シング・アウトの活動はやるんだけど、“101”だけは拒否したんです。3ヶ月の修行がね…ネックでした。自分は絶対に一人でやる人間だから。シング・アウトはこういう経験もいいなって感じで・・・。
◇デビュー・アルバムから2作目『ときどき私は・・・Seri』までは4年ほど間が空いてますね?
知らないの?あれクビになったのよ(笑)、キャニオンをね。キャニオンは歌謡曲を持ってきたのよ、「青春もの」的なね。私は、樋口康雄の才能を買っていたし、「私はあんなもの出来ませんから」って言ったら、電話がかかってきて、「あれをやらない場合はクビなんです」って・・・。
◇荒井由実さんと知り合うきっかけは?
「八月の濡れた砂」が、林美雄さんの「パック・イン・ミュージック」で取り上げられて、女王様のようにウェルカム状態でゲストに3、4回出てたら、少年みたいな(笑)な女の子が来て、それがユーミンだった。それからずっと一緒で、二人の女王になったのね、「パック・イン・ミュージック」で。
それから、私がアルバムを作る時に、素材としていろんな人の作詞をディレクターと一緒に集めて、これがいいあれがいいって選ぶ時に荒井由実も出てきて、「おしゃれな詞を書くのね〜」って感動して、それからなるべくユーミンに書いてもらうようになった。
◇当時は、荒井由実さんの他にも下田逸郎さん、矢野顕子さん、来生たかおさん、南佳孝さん、パンタさんなど有名な方々がこぞって曲を提供してますね?
全部ユーミンだったら、私がユーミンみたいになっちゃうじゃない(笑)。ディレクターの本城(本城和治)さんの力もあったんでしょうね。そして本城さんが『Never
Letting Go』というカバー・アルバムで、こんな曲を歌ったほうがいいって彼がすべて持ってきてくれて…。それも私の貯金になりましたね、いろんな歌を聴いて。
◇結婚を期に一時活動を休止されて、81年に復帰するわけですが…。
詞は書いていて、矢野誠さんと曲を作るのが楽しくて。いつでも私は、実験工房のようにいろんな人とセッションする感覚が好きなんです。矢野さんも素晴らしかったし、大村憲司というギタリストにも出会ったし。インスパイアされるっていう出来事が好きで、それでやってきてるんですよね。レコーディングしていて、彼のギターの音から彼も歌ってくれてるって感じるんです。それから彼を見るようになって、プロデューサー的なアレンジも頼んだりとか・・・。大村くんの良さは私が一番知ってる!アレンジを全部任せた時に、矢野さんに「出来るかどうか心配なんです」とか愚痴ってたみたいだけど、私が「出来んのよ〜」「やりたいの〜」「安心して〜」とか言って…(笑)。
◇2002年にもコンサートを開いてますよね?
そうなの。でも、あれって何ていえばいいのか、完全燃焼できてないのよ。だから本当の復活はこれなんです。この『Re:SEXY』っていうのは、私のブログにも書いてあるんだけど・・・、私のブログ是非、読んでくださいね。毎日、日記みたいに、激しい時には1日3回くらい(笑)。「SEXY」っていうのは下田逸郎の作品で、これが素晴らしい歌で、いろんなところに行った時に歌ってほしいっていわれて、支持されてるんだなって思ったの。その「SEXY」を『Re:SEXY』にしたのは、生き返るとか、復活とか、もう一回とか、そんな感じもあるかな。“SEXY”とは生きていることだから、「もう一回生きようじゃないか」っていう。
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【今後のこと】
◇今後の活動は?
まず、ビルボードライブのDVDを出します。オフショット満載です。NHK総合テレビの「SONGS」の収録も終わりました(6/11放送)。いろいろ注文つけちゃって、私たちのエミセリ・ワールドが出ればいいと思って。前にNHKの『夢・音楽館』に出たときにも、いろいろ注文つけた(笑)。ドアーズのDVDを持っていって、音楽とはこういうもんだと。全部写せばいいっていうもんじゃないし、照明の具合とか、テンポがないと音楽じゃないとか自己主張の鬼になりましたよ。滅多にテレビ出ないんだからと。今度もうるさいよって言ったら、一生懸命やってくれて(笑)。素晴らしかった。
私は今の時代、今の状況で一人ではやりたくないの。ちょうどいい時期にエミ・エレオノーラに出会えたことも“デスティニー”だと思いたいし、彼女が暇な時にライブもやりたい。これは定番のように、これからも続けようと思ってます。
◇セリさんにとって“女性”であることとは?
“女性”であるということは、ギリシャ神話に出てくるような女神であるべきで、みんなそういう部分を持っているんです、女性はね。それを自分でないがしろにしたり、封じ込めたりしてるわけで・・・。女の人はみんな美しいんです。それを引き出せるのは、男の人かもしれない、でも自分の力も大事。女の人はパワーを持ってるし、本当は強いんです。そんな感じで、今後はやっていこうと思います。
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なにしろ、憧れの人でもあったので最初は緊張したが、セリさんの気さくな性格と奔放(?)な発言に触れるにつれ、徐々にリラックス。その自由な感覚はビルボードライブでのステージでも存分に味わえた。70年代の石川セリ、80年代の石川セリ、それぞれが魅力的なのはいうまでもないが、今のセリさんの女性としての輝き、人生をエンジョイする姿勢はそのどれよりも刺激的だ。
(取材&Text/遠藤哲夫)
